あとがき  私は小説家ではありません。声が小さく、いつも声の大きな強者にその声をかき消されてしまう、そんな少年少女の気持の代弁者でありたいと思っているただの元自殺未遂者です。 とにかく「もう誰にもこんな思いはしてもらいたくない」「もう誰にも死んでもらいたくない」そんな気持からこの作品を書き、推敲してきました。 TVで自殺した少年少女のニュースが流れるたび、彼らの悲鳴が心に痛くて、痛くて、痛すぎて「自分にもっと才能があったなら、もしかしたら彼らは死ななくてすんでいたかもしれないのに」と激しい無力感、罪悪感にさいなまれながら。 私はこの本が売れることより、図書館に置かれること、中高の読書感想文の指定図書に指定されること、教科書に載ることを望みます。  そして、この場を借りまして、教育実習でこの小説を読んでくれた平成八年度の宮崎日本大学学園高等学校特別進学クラス二年一組、二組の生徒達に感謝の意を表します。 細かく字の詰まった読みづらいコピーを一クラスに一部ずつしか渡さなかったのに、二週間という短い実習期間の間に回し読みしてくれました。現場の高校生である君達を感動させることができなかったなら、自分にこのテーマを扱う資格はないと思っていました。しかし感動し、泣いてくれさえました。そのため、自分には「書く資格がある」と確信できました。辛い時にも認められない時にも頑張ることができました。本当に感謝します。  また、小説家になると家を飛び出してからの五年間、ぼくを支えてくれた友人達、とりわけ第二十四回写真新世紀佳作に選ばれた写真家志望の山田英人君、画家志望の榎木君、平成十三年一月にインディーズデビューしたバンド「C'est la vie(セィ・ラ・ヴィ)」のボーカルの鶴田君、ギターの川路君、それぞれジャンルは違うけれど、競い合う友として君達の頑張っている姿は、辛い時、挫けそうな時、家族が恋しくなった時、非常に励みになりました。ここに感謝の意を表します。  また、お忙しい中この小説を読んでくださってご意見をくださった三田文学編集長の作家加藤宗哉先生、日本大学文理学部国文学科教授紅野謙介先生、詩人北沢真人さん、私が未熟で非才なため、ご意見を有効に活用することができず申し訳ありませんでした。この場を借りまして感謝と謝罪の意を表します。  また、出版決定前に読んでくださった二百人以上の方々、決定前、決定後にネットを通じて小説「カツミ」としてこの作品を読んでくださった多くの中高生、その他の方々、あなた方の感想の言葉、反応は何よりも私の力になりました。本当に感謝します。 最後に詩を一つ、挽歌として今まで同じ問題に自殺していった多くの仲間達に捧げます。     凍える虎  凍える虎は巌の上に、  蒼白の天を望む。  孤独にうち震え、  強さに飢えて、  巌の上に天を望む。  孤独な虎は、  慄然と巌の上に。  静寂の夜に。  冷たく冴え渡った空気の氷に。  凍える虎はすべてを背負い、  固くすべる、  冷たい巌の上に、  持てる力をふりしぼり、    空しく爪を立てる。