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2013-04-23

【児童文学】十五少年漂流記と動画化した瞳の中の少年

 十五少年漂流記は、SFの大御所ジュール・ベルヌの冒険小説。
 小学生から中学生にかけてこの本の抄訳そして、原題の翻訳《二年間の休暇》を何度となく読み、仲間、友情、共助の必要と素晴らしさを説いた小説であると汲み取った。震災後に執拗に流された《》の言葉で片付けられてしまってはもったいない作品である。
Photo
【写真】日本アニメーションの動画紹介より
 写真に挙げた動画は、昭和62年(1987)に日本アニメーション制作、フジテレビで放送した特別番組。本作は先日カートゥーン・ネットワークで初めて視聴した。
 原作は、フランス人のブリアンと、イギリス人のドノバン(ドニファンとも)の確執、分裂そして、悪者たちが漂流先の島へ漂着したことにより、協調へと変わり、仲たがいが解消した。2年間の経験で15人は成長し物語は大団円となる。
 ブリアン対ドノバンの対立は小説が書かれた19世紀後半の西欧列強の外交関係がにじみ出ている。どちらが世界の主導権を握るかが、無人島に漂着した少年の行動であらわれている。
 動画版は、漂流に至る事件を作ったブリアンの弟ジャックの冒険終了(帰還)から3年後に振り返る作品として仕上げている。
  漂流に至った事件は、動画版では家の決まりを守れないからと、クルーズを父親に反対され、それでも参加したいと夜に船に忍び込み、船員がいると思い込んだ上で、艫綱(ともづな)をほどき《出航》させしまったと説明されている。事件の告白は原作では兄のブリアンにしているが、動画ではドノバンに行って殴り飛ばされている。
 原作より動画がドノバンのかっこよさが強調され、小説の相互の分裂になるまでの対立は極力薄められている。ジャックの過ちまで被り、兄より尊敬される存在になっている。
 《衣食足りて礼節を知る》だったからこそ、原作も動画も少年たちの共助が成立した題目の一つであった点も注目しておこう。幸運にも船が淡水が潤沢にある島へ漂着した。船に積んでいた食糧、物資が数か月の生活を維持できる範囲であったという設定と違っていたならば、苛烈なサバイバル物語になっていた。
 著名な児童文学は、原作と動画の設定は大きく相違している。動画版においては趣旨である仲間の重要性は壊さず、むしろ強調して描かれている。
 ある情報を取り出して紹介するときに、事実なら要約の許容範囲、文学作品ならどこまで改変してよいのか、趣旨を維持できるかの参考として視聴するのも一興である。