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2010-10-07

【往年のデジタル機器】キヤノワード ミニ5

 キヤノンが販売したワープロ専用機、キヤノワードミニ5の外観をまずはご覧いただこう。



CanoWord mini5(1983)


この機器の経歴書


 発売は昭和58年。販売価格は283,000円。当時30万円を切った機種として大きな話題となった。ワープロは高嶺の花。パーソナルユースとして、富士通のオアシスが75万円、東芝のトスワードも値段を下げて個人向けに売り出していた。当時はコンピュータ・ワープロ専用機は業務用で使うのが当たり前だった。それに、購入すると保守契約を結ぶのが必須だった。
 この機器はパーソナルユースを狙って販売された。当時の説明書を見ると保守契約は不要だったようで、20万円台なら手に届くようになり、やがて小型化、価格引き下げ競争と第二の電卓戦争と言われる事態に向かっていく。

(諸元)
AC100V 28W メモリバックアップなし→電源を切ると記憶内容は消える。

文書容量 5500文字

内蔵文字 非漢字・漢字はJIS第一水準(2965文字)+一部JIS第二水準漢字

印  字 24ドット・明朝体

用  紙 B5 A4 B4をスイッチにより選択


個性的な漢字変換


 このワープロは、キーボードを見ていただくとQWERTY配列(タイプライタ配列)だ。今のパソコンと同じで、ワープロ専用機を使った人は違和感がそれほどない。変換はかな漢字変換。ただし、メモリの制約もしくはコストダウン結果として熟語変換・熟語学習機能なしになっている。文節・複文節・連文節変換よりメモリを必要しない利点がある。



キヤノワード キーボード拡大図

 最下段列の大きな4つのキーが漢字変換操作などを行う。よく見ると一般的だったワープロ専用機と違う刻印がある。
 左から
【バックスペース】
【次候補】
【サーチ】
【スペース】

 変換キーは見当たらない。その代わりとなるキーがサーチだ。

 かな漢字変換を行うにはまずひらがなを入力する。この機器は最初からローマ字かな入力に設定されていてJISかな入力は機能キーで切り替えて使う。パソコンのIME、ワープロ専用機も同様に一度に入力できるひらがなの字数に制限がある。このキヤノワードはどれぐらい入力できるかは不明だが、かなりの字数のひらがなが入る。これだけ大量に入れてもサーチを押すまでは、連文節変換等に見られる、かな入力中に文法解析、先読み処理などまったくないからできる芸当だ。


ひらがなを入力後《サーチ》を押したところ

    ある程度ひらがなを入力して、サーチを押した段階で登録されたよみにあたる単語を熟語変換する。バックスペースは入力したひらがなを一文字ずつ後退して削除する。確定した文字だけもしくはカーソルキー・スペースで動かした時は、カーソルを左に移動させるだけになる。

 

写真の例は、《ほんじつはせいてんなり》を入力後、サーチを押した例。ほんじつにカーソルが移動。ほんじつにあたる熟語・単語があると示している。漢字にするには、《次候補》を押し、目的の熟語・単語が表示されたらサーチを押して確定する。

 無変換は次候補を押さずにさらにサーチを押して確定する。この他にもひらがなを反転(未確定状態に戻す)したあと再変換するキーもある。変換操作が全然違うので詳しく書くと、本ができそうな分量になるので別の機会に説明したい。


スクリーンエディタというよりラインエディタのような編集画面



編集画面。改行を押しても画面は変わらない。

 当時30万円を切る機種。当然のこととしてコストダウンの産物が多々見られる。漢字変換を熟語変換にとどめ、書式設定も、スイッチで切替え。(ソフトウエアでの複雑なプリンタ制御は不要)。それに、編集画面もラインエディタのような表示を行う。改行しても変わらない。センタリング、右寄せしても制御文字だけ入る。


書式設定スイッチ

 本体には5500文字の容量があり、文字記憶終端記号まで1行で延々と続く。逐次印刷を押して改行キーを押していけば用紙に印刷される。よってレイアウト表示も不要。徹底的にコストダウンを図っている。
 この方式がいい面は軽く、定形書式ならば早く作成できる点が挙げられる。個人で案内状・作文、報告書などたくさんの書類を必要とせずかつ美しい文書を作るのは当時としては十分過ぎる機能だと思われる。漢字変換がマニアック過ぎなければ、今でも簡単な文書を作るのに十分使える。

 機能は単純でも、文書を作るのには最低限の機能が入っている。(※コピー&ペーストはない)機会があればまた取り上げる。